たいていの親御さんはそうかもしれませんが、子どもというのは本当に可愛いもので。一瞬一瞬、強烈な発見と幸せをくれるとんでもない生き物だな、とつねづね思います。それはもちろん小学五年生になった今でもそうですが、幼き頃はなおさらです。
そんな幼き子どもといっしょに生活しているなかでわたしはある瞬間を恐怖に感じるようになりました。それは親切な年配の方から言葉をかけられる瞬間です。
「いまがいちばんいいときなのよ。」
「今をたのしみになさい。本当に、すぐに大きくなっちゃうから。」
たいていあぴちゃんの可愛さにしみじみと目を細めながら言われるその言葉。これを言われると、どうしてもこの幸せな瞬間が終わる時というのに思いをはせざるを得ず、はたして自分は今この瞬間を味わい尽くせているだろうか。この子が大きくなってから後悔することはないだろうか。などと胸がザワザワ と不安になったものでした。
わたしはたぶん真面目すぎたのです。老人たちのこの言葉を間に受け、後悔することに本気で恐怖し、子どもとの生活を後悔しない方向に最適化したのです。
結果なんですが、大成功でした。というのも、すでにもっとも可愛い時期はとっくに過ぎたと思われるわたしの育児ですが、あのときにああしていればよかったとか、こうしてあげればよかったなどという思いは皆無なのです。「わたしは楽しんだ」、「わたしは最善を尽くした」。この思いしかありません。
わたしはこの文章と漫画を、わたしと同じように恐怖しがちな親の方々に贈ります。また、親だけではなく、「人生に一片の後悔もしたくない!」と思っているわたしと同じようにわがままな人たちにも送ります。
人生に後悔しないための生活の設計方法という観点でなんらかのヒントになるのではないかと思うからです。