本投稿は、岡田尊司さん著作の「愛着障害の克服」という本のレビュー記事です。
「親にされていやだったことを子には絶対しないようにする。」これは言葉で見ると一見シンプルですが、実践となるとなかなか大変であり苦労多きことです。私の10年におよぶ子育ての中で最も苦労を感じたポイントでもあります。なぜそれに対して大きな苦労を感じるのか、先日読んだ本の中に答えを見つけたように思いますので紹介させていただきます。
この本、非常におもしろかったです。育児が死ぬほど辛かったのは愛着障害のせいだったんだなとストンと確信できました。
小さな本のわりにすごい情報量だったので、まとめるのに苦心しましたが、自分の親との関係に苦しんだことのある現役子育て世代の方に、強くお勧めします。どうぞ読んでみていただきたいです。
愛着とは何か
・親が示した愛着のタイプにより、子の性格的傾向が変わる
・愛着障害は、人間が持つ可塑性により克服することが可能
愛着とは、精神科医のボウルビィが発見した理論の中に使われている言葉です。簡単にいうと、愛着とは子どもと特定の養育者との精神的結びつきです。この愛着のタイプによって、子どもが将来にわたり示す性格や行動に大きな違いが出るということを発見したことがボウルビィです。
感受性が高く子どものニーズを汲み取れる親に育てられた子どもは、安定型の愛着タイプを示すそうです。一方、一見問題のない親でも心理的に支配することが常であったり、無関心や拒否を示す親に育てられた子どもは不安定型の愛着を示します。
この愛着の型はそのまま子ども本人の性格的傾向になります。要は、幼少時の養育者との関わり方が一生にわたって人生に影響を及ぼすということです。言わずもがなですが、安定型の愛着タイプを示す人は比較的問題なく人生を歩むのに対し、不安定型の愛着を示す人は困難があったときにつまづきやすい傾向を示すそうです。
愛着のタイプ | 困難にぶちあたったときに示す思考パターン |
安定型 | メタ認知力が発達している。自分の視点にとらわれず一歩下がって俯瞰するように物事を見ることができる |
回避型(不安定型) | 事実と向き合って考えることを避ける |
とらわれ型(不安定型) |
怒りや不安という感情に飲み込まれ、客観的な視点で物事をみたり、視点を変えることができない |
未解決型(不安定型) | 愛着の傷に関わることになると感情的になりすぎてしまい、冷静な視点を失ってしまう |
世代間伝播する愛着
非常に面白いなと思ったのが、この愛着のタイプは高確率で世代間伝播するそうです。安定型の愛着タイプの親によって育てられた人は安定型の愛着タイプで子どもを育てる。そして不安定型の愛着タイプの親によって育てられた人は不安定型の愛着タイプで子どもを育てるということです。
虐待は連鎖するという言葉がありますが、まさにこれはこの事象から説明できるわけです。逆境に強く周りの意見を過度に気にしない、人格的にも安定した人は、幼い頃に安定型の愛着タイプを持つ親から育てられたというわけです。(あくまでこの本の理論を基にすると、です。)
親の経済力、教育レベル、価値観によって子の性格や学力に差異が出てくるのはイメージにたやすいですが、幼少時の関わり方がまさに子の一生を左右するという主張が非常に興味深いと思いました。
育児がつらいのは自分の愛着の型が問題なのかも
本にはかなり詳しく愛着のタイプについて書かれています。
- どんな愛着タイプに育てられた人がどのような性格的傾向を示すのか。
- 愛着タイプによる性格的傾向がどのように将来に影響を示すのか。
- 不安定型愛着タイプで育った大人が自分を立て直すためにはどうするべきか。
- 不安定型で子どもを育ててしまう親はどのような点に気をつければよいか。
これらにより、自分がどんな愛着タイプで育てられたか。そして自分は今どういう愛着タイプで子育てをしているか。それがわかります。自分の愛着の傾向と対策が掴めるとでもいいましょうか。もし子育て中であるなら、それは絶対に早い段階で知っておいた方がいい傾向と対策です。
自身を診断してみたところ、不安定型の愛着タイプで育ち、安定型の愛着タイプを理想として子育てをしていることがわかりました。
わたしは、子どもが自分にとって望ましくない行動を示していると、第一次的に子どもに罰を与えたいという気持ちや、子どもに対する感情的な怒りが生じます。自分自身の心を第三者の目線で冷静に観察すると、これは自分が子どもの頃、親から受けてきた反応に他ならないわけです。つねづね、自身の親の反応パターンというのはたとえ成人後であっても子にとって非常に根深いものだな、と感じてきたわけですが、この本を読んで、まさにその感覚がどんぴしゃりとわたしの中に落ちてきました。大納得です。
第一次的に生じる気持ちに打ち勝って、自分自身が後発的に得た理性によって生きること。これは言葉にすると簡単ですが、育児の初期にはこれがうまくできず非常に苦しんだ記憶があります。
「親にされたことを自分の子にしない」。これは一種の自己否定に近いものがあり、経験した者にしかわからない苦しみです。もっと早くにこの本に出会っていればなぁと考えてしまいました。
この本を読んで、やはり自分がやってきたことというのは結構大きなプロジェクトだったのだな、と思いとても癒されました。
この本のいいところは、愛着障害は自分で治せると結んであるところです。自分で自分を癒す方法、具体的に述べられています。自分で治せるという部分については、わたしも大いに賛成します。
これはぜひ、かつて自分の親の対応に苦しめられた人、そして今子育てが苦しい人に読んでいただき、自己理解の助けにしてほしいと熱い心でお勧めする本です。
自己肯定感について議論するなかでこの本をお勧めくださいましたカトーコーキさんにお礼を申し上げたいと思います。